不動産譲渡担保①
Aは、その所有する甲土地およびその上の乙建物において印刷業を営んでいたが、金融会社Bから、利率を月1.2パーセントづつ月末に支払い、元本の返済期限を2年後とする条件で、1000万円を借り受ける契約を結んだ。かかる契約後にただちに、AはBから1000万円の全額を領収した。 他方で、Aは上記の契約と同時に、Bに対して負担する金銭債務を担保するために甲土地および乙建物をBに譲渡するという契約を結び、ただちにそれぞれに関してAからBへの所有権移転登記が経由された。この契約では、①AからBへの支払・返済が滞らない限り、Aはなお甲土地および乙建物を占有・使用することができる旨、②AがBに対する金銭債務をすべて弁済すれば、Bは上記の所有権移転登記の抹消に協力する旨、および③AからBへの支払・返済が滞る場合には、Bはただちに甲土地および乙建物の所有権をもってAに対する金銭債務の満足に充てることができる旨が約された。 その後、AはBとの約定のとおりにその債務をすべて弁済した。ところが、資金繰りに困ったBは、Aから返済を受けたにもかかわらず、甲土地および乙建物をCに1200万円で売却し、それぞれに関してBからCへの所有権移転登記が経由されてしまった。そこで、AはCに対してその抹消登記手続を請求した。この請求は認められるか。 ●解説● 1. 譲渡担保の意義と法的構成 本問においては、Aがその所有権をBに譲渡しているが、これはあくまでBのAに対する債権を担保するためになされている。このように債権の担保のために財産を譲渡することを譲渡担保という。 (1) 判例の見解 本問のように、債権者が弁済を受けたにもかかわらず、第三者との間に譲渡したケースについて、判例は、譲渡担保権者と第三者との関係につき、第三者に対抗しえないと解している。 (2) 学説 学説においては、譲渡担保権設定者に物権的権利が留保されるという立場が有力である。とりわけ、債権者が担保権しか取得しないという立場に立てば、もともと所有者はAであり、Bのした担保権を被担保債権の消滅とともに消滅する以上(付合性)、Cは原則として所有権を取得し得ないことになる。 また、一応債権者に所有権が移転されるものの、設定者には弁済によって所有権を回復しうるという立場に立てば、もともと所有権はBに移転されるものの、なお第三者に対抗できる。 2. 当事者の実質的判断と第三者の取引の安全 譲渡担保の法的構成いかんによって、設定者と第三者とのいずれが保護されるかに違いが生じる。それぞれについて、その例外は認められる。 設定者に物権的権利が残らないという立場からは、設定者が登記によって自己の物的権利を主張しうる。 しかし、このような事情を立法で具体的に負担であり、その意味では、譲渡担保の法的構成をどう捉えるかは、設定者と第三者との利益のいずれをより重視するか、ということになる。そして、近時の判例の多数が譲渡担保を基礎にした第三者の取引の安全と設定者の利益のいずれにより重点を置くべきかという点については、比較衡量にまつわる問題意識が表れている。 ●関連問題● 本問において、AがBにC社などと取引し、利益を折半する約束をしていたが、Bがその約束を履行せず、その結果、Aの経営が悪化した場合に、AがBの債務不履行を理由に、AのBに対する損害賠償請求権をもって、Bに対する登記の抹消登記請求ができることを主張することができるか。 ●参考文献● 安永正昭=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・1995)144頁 道垣内弘人=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・1995)120頁 古積健三郎=争点151頁 水野謙=「譲渡担保(明田)から読み解く民法」(有斐閣・2017)179頁
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不動産譲渡担保②
甲市において建設製造業を営むAは、2022年6月1日、老朽化した製造機械の更新のために、貸金業者Bから金7500万円を借り受け、Bとの間で毎月1日払い、最終弁済期2027年6月1日、利息年2.5パーセント、遅延損害金年4.5パーセントという内容の金銭消費貸借契約を締結した。また、同日、Aは、Bから貸付けを受けた金銭債務の担保のために、A所有の工場建屋およびその敷地(以下、「本件土地建物」という)の所有権をBに移転し、同年6月2日に所有権移転登記を経由した。その後、3年の間は、順調に被担保債権の弁済がされていたが、2026年10月頃より弁済が滞り、元本については、最終弁済期到来の時点でもなお2900万円余の未払金があった。そこで、Bは、2028年6月1日、本件土地建物の所有権をCに譲渡し、同月5日に所有権移転登記を経由した。 他方、Aは、2029年6月1日、Bに対して残債務ならびに同日までの利息および遅延損害金(以下、「本件残債務等」という)を提供したが、Bが受領を拒んだため、同年6月5日、本件残債務等を供託した。 (1) 以上のような状況において、Cは、本件土地建物をBから取得したことを理由として、Aに対して本件土地建物の明渡しを請求することができるか。 **(2) 上記と異なり、Bの一般債権者DがBに対して有する債権の実行として、2028年6月1日に、本件土地建物につき競売を申し立て、差押登記を同年6月5日に了した。他方で、Aが、上記と異なり、同年6月9日にBに本件残債務を弁済したとする。この場合において、AはDの不動産差押えに対して、受戻権の行使を理由として、第三者異議の訴えを提起することはできるか。 ●解説● 1. 譲渡担保の実行 債権者は、被担保債権の弁済期を経過すれば、「譲渡担保の目的の範囲内で移動を受けた担保目的物の所有権を移転する」ことを図ることができる。もちろん、譲渡担保目的物の所有権の帰属を図ることができる。 判例法理においては、2つの類型がある。一つが帰属清算方式であり、他方が処分清算方式である。 2. 受戻権 処分清算方式の場合にあっては、第三者への処分によって完全な所有権の移転が生じることになる。このため、これらの時点以降は、もはや債務者(設定者)は所有権の回復を求めることができなくなる。 受戻権は、被担保債権等弁済しないと消滅することができず、譲渡担保を、目的物の換価によって、債権者が優先的に弁済を受ける(戻し)この受戻しは、所有権的構成によれば、債権者が有する目的不動産の上の担保権(利益)を消滅させることを意味する。 3. 受戻権と譲渡担保権設定後の第三者との関係 被担保債権の弁済期経過後、債務者が第三者に処分された場合の法律関係はどのようだろうか。 一方において、譲渡担保権者は、譲渡担保の実行の範囲で目的不動産に関する処分権能を有し、これに基づいて、帰属清算あるいは処分清算による清算のいずれかの方法によって目的不動産を確定的に取得することができる。このとき、譲渡担保権設定者はもはや目的不動産の所有権を回復し得なくなる。他方、設定者は、目的不動産の所有者であって、自己の所有に基づいて第三者異議を主張しうる。 4. 譲渡担保権者の清算義務と譲渡担保権設定者との関係 設定者は受戻権の行使により目的物(利益)を対抗することができる。 判例も同様に、弁済期の経過によって譲渡担保権者が目的物を取得するという立場に立つものの、背信的悪意者を評価するさまざまな問題意識がみられる。 さらに、判例が帰属清算型の譲渡担保を念頭に置いたうえで、清算金の支払と目的物の明渡請求権の行使が同時履行にあるという立場に立つ。 したがって、本問の事実関係においては、債権者が弁済期の経過後に目的不動産を第三者に処分した場合であっても、受戻権の行使により目的物を第三者から取り戻すことができる。 ●関連問題● 本問の事実関係において、Aによる非弁活動が2028年5月15日に行われたが、Bは受領を拒絶し、Aは残債務等を同年5月31日に供託したとする。他方で、Bは、同年5月5日にCに対して本件不動産を処分し、所有権移転登記を同年6月5日に了したとする。 この場合において、CからAに対してなされた不動産の明渡請求に対して、Aはどのような反論が可能か。 ●参考文献● 水上敏=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・1995)144頁 鹿毛・最判解平成6年度208頁 増森・最判解平成21年度(下)1096頁 生熊長幸・民商法雑誌135巻2号(2007)101頁 道垣内弘人=「譲渡担保(2)物権」(有斐閣・2015)241頁 小林明=「譲渡担保」有斐閣(2015)109頁 小林明=「譲渡担保」法セミ(有斐閣・2015)128頁 林明=「譲渡担保」(有斐閣・2015)198頁
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集合動産譲渡担保
Aは、ワイン等の酒類を販売する店舗を営業する会社である。2023年4月、Aは、新たな店舗を開くための融資をB銀行から受け、これについてAは、自己の所有する甲土地にBのための抵当権が設定されていたため、Aは、甲・乙の2店舗内にある在庫商品(以下、これを「本件物件1・2」という)を担保に提供することをXに申し入れた。本件物件1は比較的高額なワインを中心としており、この時点での在庫は5000本であった。本件物件2は比較的高額のワインを中心としており、この時点での在庫は2000本であった。 2023年5月1日、BがA・X間で締結された「譲渡担保設定契約」には、「Aは、甲・乙各店舗においてAが現在所有しかつ将来取得する一切の在庫商品(ワイン)をXに担保のために譲渡する。見合債権は1000万円とし、2024年2月1日までに完済する。見合債権の金額を合わせて提供すれば、AはXからこれらの商品をBに取り戻すことができる」とされた。甲店舗内の商品については同日付けでAは設定がなされ、また、乙店舗については譲渡登記が5月10日付けで経由された。さらに、「Aは、自己の乙で、通常の営業に適した価格で譲渡することを許諾する。Aは、やがては、上に掲げる商品と引き換えに、新たな商品を補充しなければならず、Aが売却した商品は、当然に本譲渡担保設定契約の目的となる」旨の条項が挿入された。 甲・乙の2店舗内にある在庫商品、本件物件1・2は、ワイン卸売りと兼業する乙が納品した商品であり、Bから翌月14日までを1つの期間として、期間ごとに納品されたワイン売買代金の額が算定され、14日、Aが代金決済の20日その期間内に納品されたワインにつき、Yの方で、売買等の処分を行うことを許諾する」旨が合意されていた。その一方、Yの方から取引関係にあったDとの間で、新たに以下のよう取引を行った。2024年10月1日、甲・乙店舗内の在庫商品合計2000本(各店舗につき1000本ずつ)のワインを市価でYに売却するという契約を締結した。この取引は、Yが自己顧客に対する贈答品を確保するために行われたものであり、AとYとは以前にも同様の取引を行ったことがあった。引渡しの時期は2025年1月10日とされ、代金1500万円の支払と引換えにAがワインを甲および乙店舗よりYに引渡すことが約定された。 他方、最近のAの経営不振を聞いたZは、2025年1月5日、2024年11月15日から同年12月14日までの間に乙店舗にAが納品した店舗内の商品について競売を申し立て、Aに対して、残代金債務の範囲で現店舗内について引渡しを求めた。 2025年1月10日、Yは1500万円の現金を用意して甲・乙店舗に赴いたが、Aとの乙との間のトラブルを理由に引渡しを拒んだ。その後、XはAに融資し、乙店舗の引渡しを求めたが、Yが2月5日に現金で1500万円を支払い、これと引き換えに多数の1000本のワインを受領し、これを自己の倉庫に搬送した。また、甲・乙の2店舗内のワインは全て、甲店舗内の商品については2024年11月30日から12月31日までの間にZにAが引き渡したものであり、2025年1月10日までにAからZに対して代金が支払われていた。他方、乙店舗内の商品については、同期間内に搬入された全商品について代金は未払であった。 その後、Xは、Aに対する債権の回収が一段と進むので、2025年2月21日、Aを提訴しても現金も資産も返済はなされていない。 ●解説● 1. 目的物の特定性と対抗要件の具備 Xが本件物件に取得した権利は、譲渡担保の目的である、店舗内の商品という物の集合を包括して譲渡担保の目的となしうるかが問題となる。 最高裁は、「構成部分の変動する集合物についても、その種類、所在場所および量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」(最判昭和54・2・15民集33巻1号51頁)として、集合物論を採用している。 2. 乙による商品売立ての可否 3譲渡担保の目的となっている個々の商品の処分の有効性 判例の立場を前提とすれば、物件2については、Zによる動産売買先取特権が、XがYより受戻権取得によって生じた在庫商品の引渡しを求める。 3. 譲渡担保の目的となっている個々の商品の処分の有効性 判例によれば、帰属清算型・処分清算型を問わず、譲渡担保権者は、被担保債権の弁済期到来後(2月1日)後に1000本を引き渡し、その後Xが譲渡担保権を実行する。 ●関連問題● (1) 本問と異なり、2025年1月10日、AはYにウイスキーを引き渡そうとしたが、その後、AはYに甲・乙各店舗の商品を引き渡す方法として、同店舗内の商品合計2000本を、Aの汚倉庫に移動させたうえでYに引き渡すことを提案した。Yはこれを承諾し、汚倉庫にワインが搬入された。同年2月5日に、Yは予定した代金額を全額支払い倉庫内でワインの引渡しを受けたが、保管の手間等を考えてしばらく汚倉庫で保管してもらうことにした。その後、本問と同様、Xは、2025年2月21日、(2月1日を徒過しても現金も資産も返済はなされていないから、もはやAはXから本件物件1・2を受け戻すことはできず、Xはこれらの所有権を確定的に取得した」と主張して、Aに対し、本件物件1・2の引渡しを求めて訴えを提起した。Xのこの主張は認められるか。また、Aはどのような反論をすることが可能か。 (2) 本問と異なり、ZのAに対する売買契約書には、「A間の継続的な売買契約において、目的物の所有権の売買代金の完済まで乙に留保される」旨が定められ、「毎月15日から翌月14日までを1つの期間として、期間ごとに納品されたワインについて売買代金の額が算定され、1つの期間に納品されたワインの所有権は、当該期間の売買代金の完済まで売主に留保される」ことが定められていたとする。これに加えて、「Zは、Aが、自己の名で、通常の営業のために転売等の処分をすることを許諾する」旨が合意されていた。なお、2025年2月5日の時点では、甲店舗内のワインについては、11月30日から12月31日までの間にZにAが引き渡したものであり、あり、1月10日までにAからZに対して代金が支払われていた。他方、乙店舗内の商品については、同じ期間内に搬入された全商品について代金は未払であった。このとき、Zが、Aの代金不払に対して、甲・乙店舗に残った自己の売却した商品について、それらの所有権が自分にあるとして、甲・乙からの引揚げをAに対して求めた場合、XおよびYは、これについて異議を唱えることができるか。 ●参考文献● 森田修・法協124巻11号(2007)2598頁 菱田雄郷・判評582号(判例時1968号)(2007)21頁 遠藤隆一・金判1575号(2019)8頁
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所有権留保
甲土地を所有するAは、Bに対し、2021年10月6日、期間を3年とし、賃料を月10万円として同土地を貸した。Bは、工作機械を販売する事業を営む株式会社であり、仕入れた機械の一時保管場所として甲土地を借りた。工作機械の製造業者Cは、2022年1月9日、製造した製造Cを代金300万円で、また動産Dを代金200万円でBに売り渡す旨の契約をし、いずれらが代金を完済するまでCが所有権を留保することが約された。同月20日、CがBに対し動産乙・丙を引き渡し、Bは、これらを甲土地上に置いたが、動産乙は、同年3月20日に代金450万円としてDに売り渡す旨の契約が成立し、同月28日に甲土地から搬出されDに引き渡された。この頃、BのAに対する賃料の支払の滞りがちになったことから、Aは、Bに対し、同年1月分から3月分までの賃料の支払を催告し、また、同年4月14日に甲土地の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。 (1) この場合について、Dは、Bに対し、動産乙の返還を請求することができるか。Bに対し返還請求が開始したときに、Cは、Bの債務に対し、動産丙の返還を求めることができるか。Cは、Dに対し、Bに支払うべき代金のうち300万円をDに支払うべきことを請求することができるか、という点を考察せよ。 (2) B・C間の売買契約に、代金完済まで所有権を留保するという約定がなかったとする場合に、Dは、Cに対し、どのような主張をすることができるか。Dに対し破産手続が開始したときに、Cは、Bに対し、どのような権利行使をすることができるか。Cは、Dに対し、Bに支払うべき代金のうち300万円をDに支払うべきことを請求することができるか、という各点を考察せよ。 ●解説● 1. 譲渡状況 経済的取引から生じる動産の売買において、しばしば動産の売主が買主から代金の支払を受けないまま、買主に目的物を引き渡すことがある。これは、売主と買主との間に売買信用が設定されることによるものであるが、この間に買主が倒産するなどした場合には、売主は代金の回収が困難となりかねない。そこで、この間に買主から売主への代金の支払を確保する目的で、動産に何らかの担保を設定する必要がある(333条)。また、この間に買主から第三者に目的物が譲渡されて引渡しとなる場合も考えられる。 2. 所有権留保 (1) 意義 所有権留保は、売買において所有権が移転する時期を当事者の合意で定めることは可能である。この時期を前提として、買主が代金を支払うまで所有権を売主に留保する趣旨の特約が結ばれることが許容される。 所有権留保は、代金の支払の担保のために売買の目的である動産に所有権を留保する趣旨の合意(所有権留保特約)がなされる場合である。 (2) 実行 所有権留保による代金担保の実行は、上述のとおり、留保されていた所有権の目的物の返還請求による。 所有権留保の構成にもとづけば、単に所有権移転時期に関する特約として存在したことを前提に、これによって目的物を返還するにとどまり、これによって目的物を返還することを意図する。 所有権留保の場合は、これに対して目的物を返還するにとどまり、これによって目的物を返還することを意図する。 3. 留保所有権者の権利行使 動産の売主が有する留保所有権は、買主との間では完全な所有権としての効力を有するが、第三者との間では担保権としての効力しか有さない。そのため、第三取得者が即時取得の要件を具備した場合には、留保所有権は消滅する(即時取得の対象)。 4. 転得者との関係 売買目的物の所有権が第三者に移転し、かつ引渡しもされた場合には、もはや当該動産の上へは先取特権を行使することはできないものとされる。民法333条の定めるるところであり、第三取得者の善意・悪意を問わないとするのが伝統的な解釈である。 5. 物上代位 売買目的動産について売却・賃貸・滅失・損傷があった場合において、売主は、それらにより買主が取得した債権の上に物上代位をすることができる(304条)。いまだ完全に代金を支払っていない買主が第三者に目的物を転売した場合において、売主は、民法304条1項および民事執行法193条1項後段に従い、買主の転売主に対する代金債権に物上代位をすることができる。 ●関連問題● B・C間の動産丙の売買契約において、本問のとおり、Bが代金を完済するまでCが所有権を留保する旨が約されていたとする場合ににおいて、本問のAは、Cに対し、動産丙を甲土地から撤去することを求めることができるか。 また、B・C間の動産丙の売買契約において、Bが代金を完済するまでCが所有権を留保する旨の契約条件がなかったとする場合において、Aは、Bの未払賃料を取り立てるため、丙動産を差し押えることができるか。それができるとする場合におけるA・Cの権利関係は、どのように考えられるか。 ●参考文献● 田髙寛貴・判タ1305号(2009)48頁(参考判例①判批) 和田真一Ⅰ(第8版)(2018)204頁(参考判例③判批)
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代理受領の第三者効
A会社(以下、「A」という)は、B会社(以下、「B」という)より建物の建築を1億5000万円で請け負い、建築工事を完了し建物をBに引き渡した (2024年10月)。工事代金は3回に分けて支払われることになっており、Bはすでに2回の支払は済ませ、残りの5000万円の支払については工事完成・建物引渡後の同年10月16日と約束されている。 C信用金庫(以下、「C」という)は、2024年5月に、Aに対して6000万円の融資をするに際して(返済期日は同年10月10日)、Aの代表取締役Dに連帯保証人になってもらうと同時に、上記工事の残額代金債権5000万円(以下、「本件債権」という)につき、AがBに対する本件債権の取立てをCに依頼し、そのための代理権をAがCに付与する合意をした。しかし、BがAに支払ってしまうと困るため、Cの担当者がBの本社を訪れて、権限を有するBの社員と交渉して、貸金回収目的であるといった事情を説明して、Cへの支払を書面により承諾してもらった。 その後、Aは2024年10月10日の返済期日にCに6000万円の支払がなかったため、CはAにその支払を請求したが、支払がされないため、Cは本件債権からの支払を受けることにした。これに対して、Aが他から入金の可能性があるので、10月末まで支払を延ばしてほしいと懇願してきたため、Cは本件債権の取立てを見合わせることにした。しかし、Aは、Bに対してCへの取立ての委任は解除されているのでCにないとBの担当者を安心させて、BとAの口座への振込みをさせたうえで、これを引き出して建築資材の購入などに使用した。 この事例で、CはBに対してどのような請求ができるか。 ●参考判例● ① 最判昭44・3・4民集23巻3号581頁 ② 最判昭61・11・20判時1219号63頁 ■解説■ 1 代理受領の意義:BのAへの弁済は有効 本件債権にCによって債権質が設定され、Aによる債権譲渡設定の通知がなされたならば、もはやBのAへの弁済は無効になる。また、担保のために本件債権がCに譲渡されその通知がAによりBになされた場合にも、Aへの弁済は無効である。 ところが、公共工事についての地方公共団体に申する債権については、法令により債権の譲渡・質権設定が禁止されているため、これらの方法によることができない。そこで、担保目的で債務者から債権についての取立受領権限の付与を受けて、事実上優先的保護を図るという担保目的の取引が、実務慣行により発生したのである。このような担保目的の取立受領権限を趣旨する実質的担保取引を代理受領という。 本問は、民法上の問題であるため、私人間の場合を想定した事例としたが、その問題点は、公共工事の代金債権と変ることはない。 代理受領では、債権質の設定とは異なり、債務者の返済権限を奪うものではなく、債務者の代理人として取立てるにすぎないので、債務者(本問ではA)に支払われてしまえば、その弁済は有効である。そのため、債権者への支払がされないようにしておく必要があり、代理受領では、債権回収を確実なものとするために、第三債務者(本問ではB)の承諾を得ておくのである(取立委任の受任者の保護を第三債務者に、口約束か、黙諾か、請求します」といったような記載がされ、この解釈ないし判断が難解になる。それにもかかわらず、本問でいえばBがAに支払ってしまったらどうなるのかが問題になるのである(甲斐道太郎「契約方式による担保権一代理受領」遠藤浩=林良平=水本浩編著『現代契約法大系(6)』〔有斐閣・1984〕34頁以下)。 2 保佐するためには、弁済の効力を否定できないか Cを保護するために、弁済の効力を否定することもまったく不可能ではない。その方法としては、A・B・Cの三者間で、Aの受領権限を否定しCにのみ受領権限を認めるという合意があったと契約解釈により導く方法である。契約自由の原則からして不可能とまではいわないとしても、そこまでの合意をしていると契約解釈することが許されるかははなはだ疑問であろう。 そこで、次にBがCへの支払を約束しておきながら、Aに支払うことは信義則に反する行為であり、信義則上弁済の有効性を主張できないという解決も考えられる。しかし、そこまでの強い効力をこの合意に認めてよいのかは疑問である。 結局、Bのなした弁済を無効とすることは無理というほかはない。なお、代理受領という取引自体の法的性質としては、①単なる取立委任説、②債権質権類似の無名契約説、③第三者のためにする契約説、④目的無名契約説、⑤債権担保契約説などが考えられている(平井・前掲40頁参照)。 3 Cを保護する法的構成2:損害賠償による保護 (1) 第三債務者の義務 (a) 債務を負担する意思表示ではないとすると第三債務者BのCへの代理受領の承認を法的にどう分析すべきかが、この問題を解くキーポイントになる。これを単に、Cの取立権限を認めてCが請求してきたらCに支払うというだけの約束であれば、何ら法的な債務の負担の合意ではない。 しかし、債務を負担する意思表示ではないとしても、Cが本件債権から債権回収を図ろうと考えていることを知りつつ、また、これに意思表示ではないとしても支払を約束してCを安心させている。Cは担保をとったも同然と信頼して、それゆえにAに融資を行ったのである。これによりCに保護に値する利益が成立し、BはAに弁済することによりそれを侵害しない信義則上または不法行為上の義務を負うということも考えられる。そこが、その保護の対象となる権利ないし利益をどう構成したらよいのかという点でさらに疑問が生じよう。債権侵害であろうか、それとも一種の担保といった期待利益であろうか。しかし、そうすると債権侵害において違法性が認められるためには主観的要件として侵害の認識といった強度の違法性が必要ではないか、といった疑問をぬぐえない。 (b) 債務の負担という構成 債権回収上の義務や不法行為上の義務とは異なり、契約上の独自の債務(521頁、522頁参照)があるので、CはBの意思表示に対して何らかの債務を負担することはないのである。そのように解釈したとしては、保証債務とは異なるが、BがCにAに代位すべき給付を行う義務(さらには共存的債務引受)、または、Aに支払をしないという不作為義務を共存的に負担するということが考えられる。 契約自由の原則からこのような債務を負担する合意を無効とする理由もなく、問題は、そのような合意がされていると承認することができるのかということである。ただし、信義則上の義務を根拠として肯定すれば、別に合意することを説くよりもAに支払う義務を負うとの構成を肯定でき、その違反による債務不履行を語ることになる。 (c) 判例による解決 判例は、本問のように、第三債務者(本問のB)が、代理受領が解除されたという債務者(本問のA)の言を信頼して承認もせずに債務者に弁済をした事例について、おおむね次のように判示して、債務者(本問のC)による第三債務者(本問のB)に対する損害賠償請求を認容している(参考判例①)。 代理受領の委任状が提出された当時、担保の事実を知って代理受領を承認したのであり、X(債権者)からはこの請負代金を受領すれば、債務者に対する右貸金(担保権の満足が得られるという利益)を害すると判断され、この承認は、「単に代理受領を承認するというにとどまらず、代理権に基づいて得られるXの右利益を承認し、正当の理由がなく右利益が侵害されるという趣旨をも当然包含するものと解すべきであって」したうえで、Yとしては、この「承認の趣旨に反して、Xの右利益を害する(Yの過失で右のような義務がある)」と解するのが相当である(右利益の遺失の範囲で損害賠償義務がある)。 「債権の満足が得られるという利益」を問題にしているので、債権侵害というよりも実質担保取引により享受する担保的利益を問題にしているものとなる。あるいは民法709条では、権利だけでなく法的に保護される利益も含まれるので(2004年の現代語化で明記)、条文とは齟齬しない。そして、損害は、本問でいうと、CがAに対する債権を回収できないという損害ではなく、CがAのBに対する本件債権から債権回収をするという担保利益を問題にしている。そのため、(2)のように他に担保があって損害は否定されないことになる。 (2) 賠償請求できる損害 代理受領の約束に反して第三債務者により債務者への弁済がなされた場合、債権者に対する不法行為が成立するとも、担保権は不可であろう。担保侵害であるとすると、その担保による確実な回収可能性ということになり、その担保がなくても債権回収できる場合であっても損害ありということになるのであろうか。 この点の参考判例②は、原審判決は、「一種の担保が失われても残存する他種の担保によって十分に担保されているときには、損害の発生には影響がない」として、資力十分な連帯保証人がいるため、「代理受領の喪失による損害はない」としたのを破棄し、「担保権の目的物が債務者又は第三者の行為により全部滅失し又はその効用を失った場合に、他に保証人等の人的担保があって、これを実行することにより債権の満足を得ることが可能であるとしても、かかる場合、債権者としては、特段の事情のない限り、どの担保から債権の満足を得ることも自由であるから、そのうちの一の担保が失われたことによりその担保権から債権の満足を受けられなくなったこと自体を損害として把握することを妨げられない」と判示して、他に保証人等の人的担保が設定され、債務者がその履行請求権を有するときは、右担保権の侵害とみなされるので、代理受領を超えて担保侵害の一般論としても注目される判決である。抵当権侵害については、その抵当権により債権回収しえた金額が損害であり、債務者が資力十分であり債権を保全しえないとしても、損害賠ごうが認められることになる。債権者に行きすぎた保護を与えるものではないか」という疑問は残るが、損害の認定を軽減するという観点からは是認してよい解決である。 4 本問への当てはめと関連問題 (1) 本問への当てはめ 判例を本問に当てはめれば、Bには、承認という先行行為に基づく不作為義務ないし不可侵義務として、本件債権から確実に債権回収ができるという「利益」「不利益」を侵害しない義務が課せ。 そうすると、Bは容易にCの承諾に応じたのに、Aの説明のみを鵜呑みにしてAに支払っており、この義務に違反する過失があるといえ、BはCに対して民法709条(ないし同715条1項)による損害賠償債務を負うことになる。Bとしては、確実な連帯保証人Dがいるので注意は散漫になるという主張をするであろうが、上記判例②によればこのような主張は認められないことになる。 (2) 代理受領の関連問題(Dへの影響が対象) (a) 債務不履行責任の当否 代理受領の問題としては、まず、債務を負担する意思表示までないとしても、信義則上の義務の成立とその違反による債務不履行を問題にできないかという問題がある。法条文1条3項の移動で新たな権利義務関係によることができ、消滅時効の点で債務不履行責任による利益があるが、信頼保護の義務をそこまで拡大できるのかは問題が残される。 (b) Aに対する求償の問題等 次に、もしBがCに損害賠償をした場合、BはAに求償できるか。また、AのCに対する債務はどうなるかという問題がある。BのAに対する弁済は有効なので、不当利得返還請求は認められない。また、BはAに対する債権を保証人Dの保証債務を代わりに弁済したわけではない。しかし、AがCとBから二重に債務額を超える支弁を受けるのは正当ではないはずであり、CのAに対する債権が存続するというのでは不合理である。こうして、A・B・C三者間の関係になり、BのCに対する賠償金の支払により、CのAに対する債権も消滅すると考えるべきである。そうすると、Cに対してAとDは連帯債務を負うことになるため、公平の観点からBからAへの求償が認められるべきであり、実質的に担保ということと考えれば、BからAへの直接な求償を認めるべきであろう。 (c) Bに対する求償権の問題 さらに、Bと連帯保証人Dとの関係も問題になる。というのは、このAに対する債務につき、BとDの2人が担保を負担することになるからである。①Bが弁済した場合、Dは担保を免れるので(Bの免責行為が有益)、②他方、Bが賠らなければならない。 Dに対する保証債務に全面的に弁済の代位ができるというのでは、公平ではない。そのため、C・D間には共同保証人相互の求償についての民法465条1項を類推適用して、相互に頭割りでの求償を求めるべきである。 (d) 第三者との関係 さらには、正規の担保ではないので、第三者への対抗はどうなるのかという疑問が残される。代理受領の合意後に、本件債権が第三者に譲渡されたり、質権が設定されたり、さらには第三者が差し押えることが考えられる。対抗要件がないのみならず、あくまでAC間の相対的な義務にすぎないので、他の第三者はCのBとの関係で認められる利益を害しない不可侵義務を負わないというべきである。結局、Cは第三者が差し押えたならば、それを排除できないことになる。 では、二重に代理受領が合意されたらどうなるであろうか。両者に第三債務者が承認してしまえば、相対的な義務であるので、いずれに対しても何という利益そしてそれを侵害しない義務が成立するのであろうか。 【関連問題】 もし本問において、CがAから本件債権について取立・受領権限の付与を受けたのではなく、AがCの有する預金口座に、Bが本件債権の支払金を振り込むことをAに約諾したが、AがBに、AがD銀行に有する口座に振込先を本件債権の支払先を変更することを求め、Bがこれに応じてD銀行のAの口座に本件債権の支払金額を振り込んだ場合だとしたら、CはBに対してどのような法的請求ができるであろうか。 ●参考文献● 杉田平一郎・最判解民昭和44年度(上) 133頁/内田貴『担保・保証Ⅰ (第6版新民法対応補正版)』(2006) 210頁/梅秀夫編著『現代担保の判例Ⅱ (ジュリ増刊)』(有斐閣・1994) 107頁(松本恒雄)/谷川宇彦「代理受領(現代的問題)」京都学園法学56号(2008)1頁以下 (平野裕之) 判例索引 (参考判例として掲載されたもののみ太字で示した) 大判明37・12・13民録8輯1591頁 大判明39・3・31民録10輯422頁 大判明40・6・13民録11輯688頁 大判明41・9・25民録14輯941頁 大判明43・12・15民録18輯1276頁 大判明43・12・17民録18輯1301頁 大判大元3・4・5民録20輯345頁 大判大元3・12・15民録20輯1101頁 大判大元5・11・8民録22輯2078頁 大判大元5・12・25民録22輯2509頁 大判大元6・12・27民録23輯2324頁 大判大元7・2・22民録24輯284頁 大判大元7・3・9民録24輯421頁 大判大元7・10・2民録24輯1852頁 大判大元7・10・30民録24輯2087頁 大判大元8・3・6民録25輯414頁 大判大元8・6・13民録25輯1214頁 大判大元8・7・14民録25輯1213頁 大判大元8・11・1民録25輯1944頁 大判大元9・4・27民録26輯899頁 大判大元9・5・11民録26輯640頁 大判大元9・6・1民録26輯858頁 大判大元9・7・16民録26輯1038頁 大判大元10・7・8民録27輯1373頁 大判大元12・12・17民集3巻648頁 大判大元13・11・20民集5巻516頁 大判大元14・7・14民集6巻491頁 大判大元15・3・29民集7巻190頁 大判昭元2・9・26民集9巻13頁 大判昭元4・12・11民集8巻923頁 大判昭元6・6・4民集10巻601頁 大判昭元7・6・8民集11巻1115頁 大判昭元7・6・21民集11巻1368頁 大判昭元9・6・20民集13巻1118頁 大判昭元9・10・13民集13巻875頁 大判昭元9・6・2民集13巻931頁 大判昭元10・4・23民集14巻603頁 大判昭元10・8・10民集14巻1401頁 大判昭元11・2・25民集15巻372頁 大判昭元11・7・2民集15巻1029頁 大判昭元11・12・9民集15巻2172頁
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抵当権に基づく賃料債権への物上代位
Xは、2017年9月4日、Aに対して2億円を貸し付け、同債権を担保するために、A所有の賃貸用ビルに第一順位の抵当権の設定を受け、抵当権設定登記を備えた。中には、賃借人Yらが存在していたところ、Yらから得られる月額の賃料合計は500万円で、賃料は毎月前月末日までに支払うものとされていた。2018年9月4日、Aが定期利息の支払を怠ったため、Aに対して5300万円の債権を共有していたが、債権の回収に不安を感じた。そこで、2018年9月5日、BがAと交渉し、前記5300万円の債権に対する代物弁済として、同年10月分から2019年8月分までの中で甲の賃料債権の譲渡を受けた。Aは、Yらに対して、内容証明郵便で債権譲渡を通知し、これらの通知は2018年9月11日までにYらに到達した。 Xは、国会の経済政策に大きな影響を与えたとして、Xは、2018年9月12日、抵当権に基づく物上代位権の行使として、AがYらに対して有する甲の賃料債権(ただし、管理費および共益費相当分を除く)に対して、本件抵当権に基づく支払期日に消滅金に充てるまでの部分を対象に、債権差押命令を申し立てた。差押命令は、9月18日までにYらに送達され、9月20日にAにXが送達された。 Xが、2018年9月28日、最高裁(民集153巻2号・155条)に基づきYらに対し10月分の賃料の支払を求めたところ、YらはBへの債権譲渡の存在を理由に支払を拒否した。Xは、民法(193条2項・157条)を根拠とし、Yらに10月分および(代物弁済の効来する)それ以降の賃料の支払を求めることができるか。 ●解説● 1. 抵当権に基づく賃料債権への物上代位 民法372条は、先取特権に基づく物上代位の規定である民法304条を抵当権に準用する。それゆえ、民法304条1項本文を素直にみると、「抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる」(物上保証人や第三取得者の存在を考慮し、「債務者」は「抵当不動産所有者」と読み替えられる)。しかし、抵当権と先取特権は性質を異にする判断である(たとえば効力の有無、333条参照)。特に抵当権設定契約に基づき、抵当権者が物上代位権を目的物について優先的に行使することを認めている議論があった。 (1) 賃料債権への物上代位の可否 抵当権は、目的物の使用・収益を抵当権設定者に委ねる非占有担保であり(目的物の交換価値のみを把握)、設定者の収益権限に介入することはできないとも考えられるため、抵当権に基づく賃料債権への物上代位を原則として否定する設定も考えられなくなかった。2003年改正前の民法371条によれば、目的不動産の差押(天災)後でなければ、抵当権の効力が目的不動産の果実には及ないとされていたため、それとの均衡から抵当権の実行としての目的不動産の差押後でなければ、賃料債権(法定果実)への物上代位を認める見解もあった。 (2) 賃料債権を把握するための手段 担保不動産収益執行は併行して申し立てる。抵当権者は、賃料債権から優先弁済を受けるべきである。不動産の所有権が第三者に譲渡され、管理人が選任され、不動産の所有権の管理および収益を専有し、第三者の部分が、抵当権者に劣後する(民事執行法188条・59条参照)。 2. 抵当権に基づく物上代位と目的債権の譲渡との優劣 (1) 判例の立場 参考判例②は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が確定日付のある通知による対抗要件(467条)を具備した後に、抵当権者が目的債権を差し押さえた事案で、物上代位権の行使としての差押えと債権譲渡の優劣は、確定日付のある債権譲渡通知と差押命令の第三債務者への送達の先後によって決するとしている。 (2) 差押えの意義について 差押えは、物上代位の目的債権が譲渡された場合に、譲受人が確定日付のある通知による対抗要件を具備した後に、抵当権者が目的債権を差し押さえた場合に、抵当権者が物上代位権を行使することができるかどうかが問題となった。 (3) 物上代位に対するその他の対抗手段 物上代位の対象とされた目的債権に、賃料債権以外の債権(たとえば転貸料)は含まれるかという問題がある。そこでは、転貸料は賃料債権の履行として行われるものであるから、物上代位権の行使が問題となった。
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物上代位と相殺
Aは、5階建てのオフィスビル(以下、「本件建物」という)の所有者である。2022年11月15日、Aは、Yに対し、本件建物の1階および2階部分を賃貸し(以下、この契約を「本件賃貸借契約①」という)、これを引き渡した。賃貸借の期間は15年、賃料は月額500万円、敷金は1500万円、保証金は5000万円とされた。同日、Yは、Aに対して定められた敷金と保証金を交付した。2024年5月10日、Xは、Aに対する1億5000万円の貸金債権(以下、「本件貸金債権」という)を担保するために、Aから本件建物について抵当権の設定を受け、その旨の登記を経た。 2027年5月10日、Aは、Zに対し、本件建物の3階部分を賃貸し(以下、この契約を「本件賃貸借契約②」という)、これを引き渡した。賃貸借の期間は10年、賃料は月額300万円で、敷金は1000万円、保証金は4000万円とされた。同日、Zは、Aに対し、Aとの間で定められた敷金と保証金を交付した。 2029年1月15日、Aは、本件貸金債権にかかる債務について、履行遅滞に陥った。そこで、Xは、抵当権に基づく物上代位権の行使として、同月25日、AのYに対する本件賃貸借契約①に基づく賃料債権およびAのZに対する本件賃貸借契約②に基づく賃料債権について差押命令を申し立て、同月27日、それぞれYとZとに送達され、同月29日、いずれもAに送達された。差押命令の範囲は、AのYに対する本件賃貸借契約①に基づく賃料債権およびAのZに対する本件賃貸借契約②のいずれについても、2029年1月分から同年12月分までである。YとZとは、Xから同賃料債権の取立てを受けたときに、どのような反論をすることができるか。 ●解説● 1. 物上代位と相殺に関する判断枠組み 抵当権者は、抵当権に基づく物上代位の行使として、抵当不動産の賃料債権を差し押さえることができる。この場合において、差押命令が抵当不動産の所有者に対して送達された日が、抵当不動産の所有者に対して(民事193条2項の東定による155条1項本文の準用)、抵当権者が賃料債権の取立てをすることができる日である。 (1) 抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権とする相殺 判例によれば、抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない(参考判例①)。物上代位により抵当権の効力が公的に公示されているからである(このことについて、最判平成10・1・30民集52巻1号1頁→本章Ⅲ)。 (2) 抵当権設定登記の前に取得した債権を自働債権とする相殺 これに対し、抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の前に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし、賃料債権を受働債権とする相殺をもって、抵当権者に対抗することはできる(参考判例①)。この場合には、抵当権に基づく物上代位による差押えがされたものと評価される(372条・304条1項ただし書)からである。 2. 自働債権の特殊性:敷金・保証金 自働債権が敷金である場合は、物上代位と相殺との優劣に関する一般ルール(前述1)が適用される。これに対し、敷金返還請求権が問題となった事案について、その内容に立ち入らずに判断を下したものとして、参考判例③がある(参考判例③を参照)。 3. 相殺の合意の効力 抵当権設定登記の後に取得した賃借人の賃貸人に対する債権と賃料債権とで、相殺の合意が成立した場合には、その相殺合意の効力を抵当権者に対抗することができる。 4. 2017年民法改正の影響 2017年民法改正は、物上代位と相殺との優劣に関する判例法理を前提とするものである。 5. 敷金と相殺 敷金は、賃貸借契約の期間満了後、賃借人が賃貸人に対して有する敷金返還請求権(622条の2第1項)を自働債権として、賃貸人が賃借人に対して有する賃料債権とを相殺することを予め合意したものであるとみることができる。
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抵当権の効力の及ぶ範囲
Aは、甲土地とその地上にある乙建物を所有する。甲土地には、AがXに対して負う債務を担保するための抵当権が設定され、その旨の登記がされている。甲土地の一部は日本庭園となっており、Aは、その眺望を売りの1つとする料亭を乙建物で営んできた。2、3年ほど前までは経営は順調であった。ところが、近隣に建てられたホテルに客を奪われるようになったため、Aは、甲土地を駐車場として貸し出す等の対応を講じた。そこで、必要な経費の追加をXに願い出たところ、Xは、改めるべきは料理であるとの考えを示し、Aからの申出を断った。料亭に積極的でないと固く信じていたAは、Xからの借金を、父からの借金の手配に切りかえた。具体的には、甲土地に大きめの石灯籠と小さめの石灯籠(以下、それぞれ「石灯籠大」「石灯籠小」という)の2つを設置した。 ところが、このような対応は客に受け入れられず、客足を回復するまでには至らなかった。やがて資金繰りに窮するようになったAは、石灯籠を2つとも、やはり料亭を経営する友人に売ることにした。 石灯籠大は、後日、Aが引渡しに必要な手配をすることとされていたが、まだなお甲土地上に置かれたままである。石灯籠小は、契約を結んだその日にYが自らトラックで持ち去った。以上の場合において、Xは、Yに対し、石灯籠小の引渡しを請求し、石灯籠大につき甲土地に属することを請求することができるか。 ●解説● 本問の抵当権者Xによる石灯籠の搬出禁止と原状回復の請求は、物権的請求権の行使による。石灯籠が甲土地に付合したものであること、XがこれをYに対抗できることが前提となる。 1. 抵当権の効力が石灯籠に及ぶか 抵当権は、土地・建物といった不動産に設定することができる(369条1項)が、その効力の及ぶ範囲は土地・建物それ自体に限られない。民法370条本文により、抵当不動産に「付合して一体となっている物」に抵当権の効力が及ぶことを規定し、同条本文が規定するように、建物は土地の付加物と一体とみることができる。ただし、土地に設定された抵当権の効力が建物に及ぶことはない。土地・建物は別個の不動産であり、建物自体の取引観念も自立している。 抵当不動産に付合してその一部(構成部分)となっている物(付合物)を抵当権設定後に甲土地に樹木が植えられたならば、抵当権の効力は樹木にも及ぶ。これに対して、本問の石灯籠のような従物はどうか。主物と同一の所有者に属し、物の独立性を保ちながら、主物の経済的効用を高めるという(87条1項)、独立性を保ちながら、主物の経済的効用を高めるという特徴から、抵当不動産の従物は「付合して一体となっている物」に当たるとした判例があり、実際には、民法370条本文の付合に及ぶ効力とみている。 2. 石灯籠につき抵当権の効力を第三者に対抗できるか 抵当権は、石灯籠の取引の目的を妨害しないと解されているが、その他、抵当権の効力が及んでいることに対抗できるか(参考判例①)。 ●発展問題● Aは、Bから賃借している甲土地上に乙建物を所有し、これをコンサート会場として甲土地において利用していた。Aは、運搬資金を調達するための抵当権が設定・登記されている。乙建物の現在の評価額は1億円であり、甲に対する賃借権は2億円と評価する。 (a) 10年以上前から使ってきた舞台装置(B)があったが、流行の演出をすることができなかったので、Aは、新しい舞台装置(B)をDから4億円で購入した。Bの現在の評価額は3億円であり、乙建物から容易に取り外すことができる。 (b) 抵当権に基づく競売がなされ、Eが乙建物を買い受けた。Bが、「自分が土地を買い戻した」のでAのBであり、Eは抵当権の実行がないと、乙建物に対する占有の明渡しをEは、これを拒むことができるか。 (c) DがGの舞台装置の所有権を自己に留保してAに売却したところ、Aから売買代金の支払を一切受けられなかったため、Gは引き上げた。Gは、乙建物に対する譲渡を譲受けることができるか。 (d) Bの舞台装置は、Fに対して担保設定の趣旨で譲渡された。所有建物の登記にFの建物にも戻すことができる。これら、乙建物の価値に属するよう請求することができる。 (e) Aは、事業がうまくいかなくなり、生活苦にすら困るようになったため、後片付けのことを考えず、Gの舞台装置をGに預けず、Gは、AがC以外の者からも生活資金の援助を頼っている事情を知り、これにつけ込んで、Bを2000万円で買い叩いた。Gは、乙建物に抵当権が設定されていることも知っていたが、これが過失なく知らなかったAに好機に乗じておりBの3億円で転売し、Bは、今自己の建物に持ち去った。Bは、GおよびHに対し、いかなる請求をすることができるか。 ●参考文献● 吉積健三郎・百選Ⅰ 172頁 青木則幸・百選Ⅰ 182頁
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抵当権に基づく明渡請求
A銀行はB会社に対して1億円融資をし、2020年3月1日、B所有の甲建物に抵当権の設定を受け、設定登記を了した。Bが債務不履行に陥ったので、2023年6月1日、Aは甲建物につき抵当権の実行を申し立て、競売手続が開始された。ところが、甲建物を占有する者がいたため、売却手続における買受人が現れず、売却基準価額の見直しがされたが、その後も買受人が見込みが立っていなかった。Aは、BおよびCに対して、いかなる請求をなしうるか、以下の(1)、(2)の場合を分けて考察しなさい。 (1) Bが、甲建物を不法占有している場合 (2) Bが、2022年5月1日、甲建物をCに、期間5年、賃料月額50万円(不動産の適正賃料は月額300万円であった)、敷金1億円、譲渡・転貸自由の約定で賃貸し、Cが引渡しを受け、現在、甲建物に居住している場合 ●解説● 1. 占有権原としての抵当権 伝統的な考え方によれば、非占有担保である抵当権は、目的物の利用価値を設定者に留保して、目的物の交換価値(担保価値)のみを把握する「価値権」であるゆえに、財産処分の効力を引き出すことができる反面、「価値権」から使用・収益はなしえないとされる。ところが、特に昭和50年代以降、執行妨害が横行するようになり、抵当権者は、執行妨害を実力で排除する(自力救済)ほか有効な対抗手段がなかった。 多くの下級審裁判例が、執行妨害の実態を踏まえてこれを是正したほか、最高裁は、原則論(建前論)に固執した。最高裁は、占有者の占有権原の有無について、所有者の明渡し請求権を代位行使した所有者によって、所有者の明渡し請求権が認められると解した(民法423条の債権者代位権の規定を参照)。 2. 不法占有者の排除 参考判例①は、占有者が、権原を有しない占有者(不法占有者)の排除を認めた。その骨子は以下のとおりである。 まず、抵当権者は、原則として、抵当不動産の所有者が行うべき不法占有の排除について、代位行使が認められる(民法423条の債権者代位権の規定を参照)。 その上で、抵当権者は、抵当不動産の所有者による不法占有の排除が円滑に行われないために、抵当権侵害が継続するような困難な状況があるときは、これを抵当権に対する妨害と評価することができる。 その上で、抵当権者は、抵当不動産の所有者による不法占有の排除が円滑に行われないために、抵当権侵害が継続するような困難な状況があるときは、これを抵当権に対する妨害と評価することができる。 3. 占有権原の排除 小問(2)では、小問(1)のような原状(短期賃借権)に、占有権限を排除することは可能か。参考判例②は、一定の要件のもと、占有権限を認める判決を下した。 最高裁は、参考判例②を引用し、抵当権者に対する妨害排除の作用が、抵当権設定登記後の所有者から占有権限の設定を受けて占有する者について、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権限を主張することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権限の主張を認める判示をしている。 4. 抵当権者の占有権原の取得と利用権の調整 判例法理を整理しておこう。最高裁は、抵当権者が占有権原を支配する基礎となる交換価値の実現が困難となることを、第三者の交換価値(物権)に対する妨害状態(物権)であるとみている。 ●関連問題● 本問において、Bが2019年2月25日、甲建物をCに、期間5年、賃料月額50万円、敷金1億円、譲渡・転貸自由の約定で賃貸し、Cが引渡しを受け、現在、甲建物に居住している場合、Aは、BまたはCにどのような請求をなしうるか。 ●参考文献● 松岡久和・百選Ⅰ(第5版)(2001)178頁 田高寛・百選Ⅰ 180頁
民法1
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法定地上権①
Aとその父Bは、親子で工務店を営んでいた。Aは、結婚を機に、Bと相談のうえ、B所有の甲土地に、下層階に工場の倉庫スペース、上層階にAの新居スペースをもつ建物を建てることにした。ほどなく甲土地上に乙建物が完成し、Aを所有者とする登記もされた。Aら夫婦の居住も始めた。その翌年、Aは、Bに、乙建物と工場の設備拡充のためX銀行から融資を受けるに当たり、その担保として、Xのために乙建物上に1番抵当権(被担保債権額3600万円)を設定した。 それから2年後、Bが交通事故で急死し、Aが甲土地を相続した。Aは、経営が悪化する一方の工場の資金繰りに窮し、新たにY銀行から融資を受けることになった。そこで、Yのため、まずは甲土地上に1番抵当権(被担保債権5000万円)、そしてその翌年には乙建物に2番抵当権(同500万円)が順次設定された。 その後、工場の経営はますます行き詰まり、ついにXの申立てにより甲土地と乙建物が競売に付された。執行裁判所は、両不動産の売却で得られた配当財産6000万円につき、甲土地価額5000万円をYに、乙建物価額1000万円をXに配当する配当案を作成した。これに対し、Xが配当異議の訴えを提起した。すなわち、甲土地には乙建物のための法定地上権が成立するため、甲土地の価額の6割に当たる3000万円は法定地上権の価額に相当するものであるとして、乙建物の全額1000万円とともに建物抵当権者に配当されるから、Xの主張は認められるか。 ●解説● 1. 法定地上権の成立要件 法定地上権の成立要件の1つに「抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一人であること」がある(388条)。本問では、Xの1番抵当権設定時には土地と建物の所有者が異なっていたが、その後の抵当権設定までの間に同一人に帰属するに至っている。 法定地上権の効力は従たる権利である土地利用権にも見えぬため、もし本問で法定地上権の成立が認められるとすれば、XとYの土地の価額の5分の3も法定地上権の部分は建物抵当権者に配当されることになる。 (1) 設定時に同一人に帰属した場合のみの登場人物(甲と乙をA所有として) 抵当権設定時に土地と建物が同一人に帰属していた事例が多いのである(参考判例①)。 法定地上権の成立要件に、Yの抵当権設定時(なかった)のをどう評価するか。 Yの抵当権設定時(なかった)のをどう評価するか。 (2) 土地と建物が同一人に帰属した後、2番抵当権が設定された場合 土地に1番と2番の抵当権が順次設定された場合につき、判例は、法定地上権の成立を否定する(参考判例②)。法定地上権の成立を認めると、1番抵当権者が把握していた、約定担保価値が損なわれる、というのがその理由である。 (3) 土地と建物のそれぞれに2番抵当権が設定された場合 土地・建物のいずれにも抵当権が設定された後、建物が同一人に帰属し、次いで建物に抵当権が設定され、土地抵当権の実行時には法定地上権は肯定されることになる。 2. 本問についての結論 Yの抵当権の設定時に成立要件を具備していることを踏まえ、法定地上権の成立を認める見解に立つならば、X主唱の、建物の抵当権者Xに担保価値額3000万円が配当され、さらにYには、土地の価額5000万円から法定地上権の価額を引いた残額(底地価額)2000万円が配当される。他方、AB間で賃貸借契約が結ばれていたらならば、建物の抵当権者には建物価額1000万円に加えて約定利用権の価額分も配当される。前述のとおり、約定利用権は、法定地上権よりも額は概して低く、これを土地の価額の5割で計算するとすれば、本問では2500万円となる。その結果、1番抵当権者Xには3500万円が、土地の抵当権者Yには底地価額2500万円が配当される。 なお、ごくわずかな対価の支払しかされていない場合では、賃貸借と使用貸借のいずれであるのかを判断するのが非常に難しい(最判昭和43・10・27民集20巻8号1649頁、最判昭和53・7・17金法874号24頁等)。本問では、Xが抵当権の価値を認定する際には、賃借権の存在が看過されていたのであるが、実際にそれが認められるかは、AB間で賃貸借を認めるに足る対価の授受があったか否となる。本問の解答をする際には、そのことにも留意しつつ適切な形で総合分けをすることが求められる。 51 法定地上権② Aは、自己所有の甲土地上に5階建ての乙建物を建て、自身が経営する会社の事務所に使用していた。Aは、会社の経営規模を拡大させるべくB銀行から融資を受けることとし、2019年3月、Bとの間で、甲土地および乙建物につき、根抵当権を設定し、根抵当権者をBとする共同根抵当契約を締結した。ところが、乙建物は、2020年4月にこの地を襲った大地震によって倒壊、滅失した。Aは、これを機に別の場所に移して会社の新社屋を建てることにして、甲土地上には、2021年1月、比較的小さな丙建物を建築し、これをCに賃貸した。 ところが、ほどなくAの会社の経営は危機的状況に陥り、Aは弁済期日にBに対して債務を弁済することができなくなった。そこでBは、甲土地につき、上記根抵当権に基づいて裁判所に不動産競売を申し立て、裁判所は2021年12月に不動産競売開始決定をした(なお、BのAに対する被担保債権額は1億4000万円であった)。2022年4月、Yは、甲土地につき売却許可決定を受けて、代金9800万円を納付し、甲土地の所有権者となった。そこでYは、甲土地の所有権に基づく返還請求として、Aに対して丙建物収去・甲土地明渡請求を、Cに対して丙建物退去・甲土地明渡請求をした。 Yの訴えは認められるか。 ●関連問題● Y所有の甲土地とYの子Aが所有する丙地上の乙建物とに、Bの1番共同根抵当権(α)が設定された。翌年、Aが死亡し、乙建物をYが相続したが、その後に甲土地にCの2番抵当権(β)が設定された。次の各場合において、Xは、Yに対して乙建物の収去および甲土地の明渡しを請求することができるか。 (1) 上記のような状況のまま、Cがβ抵当権を実行し、Xが甲土地を買い受けた場合 (2) α抵当権の設定契約が解除され、抹消登記がなされた後に、Cがβ抵当権を実行し、Xが甲土地を買い受けた場合 ●参考文献● 伊藤進・金法1267号(1990)6頁 松本恒雄・百選Ⅰ 184頁Aとその父Bは、親子で工務店を営んでいた。Aは、結婚を機に、Bと相談のうえ、B所有の甲土地に、下層階に工場の倉庫スペース、上層階にAの新居スペースをもつ建物を建てることにした。ほどなく甲土地上に乙建物が完成し、Aを所有者とする登記もされた。Aら夫婦の居住も始めた。その翌年、Aは、Bに、乙建物と工場の設備拡充のためX銀行から融資を受けるに当たり、その担保として、Xのために乙建物上に1番抵当権(被担保債権額3600万円)を設定した。 それから2年後、Bが交通事故で急死し、Aが甲土地を相続した。Aは、経営が悪化する一方の工場の資金繰りに窮し、新たにY銀行から融資を受けることになった。そこで、Yのため、まずは甲土地上に1番抵当権(被担保債権5000万円)、そしてその翌年には乙建物に2番抵当権(同500万円)が順次設定された。 その後、工場の経営はますます行き詰まり、ついにXの申立てにより甲土地と乙建物が競売に付された。執行裁判所は、両不動産の売却で得られた配当財産6000万円につき、甲土地価額5000万円をYに、乙建物価額1000万円をXに配当する配当案を作成した。これに対し、Xが配当異議の訴えを提起した。すなわち、甲土地には乙建物のための法定地上権が成立するため、甲土地の価額の6割に当たる3000万円は法定地上権の価額に相当するものであるとして、乙建物の全額1000万円とともに建物抵当権者に配当されるから、Xの主張は認められるか。 ●解説● 1. 法定地上権の成立要件 法定地上権の成立要件の1つに「抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一人であること」がある(388条)。本問では、Xの1番抵当権設定時には土地と建物の所有者が異なっていたが、その後の抵当権設定までの間に同一人に帰属するに至っている。 法定地上権の効力は従たる権利である土地利用権にも見えぬため、もし本問で法定地上権の成立が認められるとすれば、XとYの土地の価額の5分の3も法定地上権の部分は建物抵当権者に配当されることになる。 (1) 設定時に同一人に帰属した場合のみの登場人物(甲と乙をA所有として) 抵当権設定時に土地と建物が同一人に帰属していた事例が多いのである(参考判例①)。 法定地上権の成立要件に、Yの抵当権設定時(なかった)のをどう評価するか。 Yの抵当権設定時(なかった)のをどう評価するか。 (2) 土地と建物が同一人に帰属した後、2番抵当権が設定された場合 土地に1番と2番の抵当権が順次設定された場合につき、判例は、法定地上権の成立を否定する(参考判例②)。法定地上権の成立を認めると、1番抵当権者が把握していた、約定担保価値が損なわれる、というのがその理由である。 (3) 土地と建物のそれぞれに2番抵当権が設定された場合 土地・建物のいずれにも抵当権が設定された後、建物が同一人に帰属し、次いで建物に抵当権が設定され、土地抵当権の実行時には法定地上権は肯定されることになる。 2. 本問についての結論 Yの抵当権の設定時に成立要件を具備していることを踏まえ、法定地上権の成立を認める見解に立つならば、X主唱の、建物の抵当権者Xに担保価値額3000万円が配当され、さらにYには、土地の価額5000万円から法定地上権の価額を引いた残額(底地価額)2000万円が配当される。他方、AB間で賃貸借契約が結ばれていたらならば、建物の抵当権者には建物価額1000万円に加えて約定利用権の価額分も配当される。前述のとおり、約定利用権は、法定地上権よりも額は概して低く、これを土地の価額の5割で計算するとすれば、本問では2500万円となる。その結果、1番抵当権者Xには3500万円が、土地の抵当権者Yには底地価額2500万円が配当される。 なお、ごくわずかな対価の支払しかされていない場合では、賃貸借と使用貸借のいずれであるのかを判断するのが非常に難しい(最判昭和43・10・27民集20巻8号1649頁、最判昭和53・7・17金法874号24頁等)。本問では、Xが抵当権の価値を認定する際には、賃借権の存在が看過されていたのであるが、実際にそれが認められるかは、AB間で賃貸借を認めるに足る対価の授受があったか否となる。本問の解答をする際には、そのことにも留意しつつ適切な形で総合分けをすることが求められる。 51 法定地上権② Aは、自己所有の甲土地上に5階建ての乙建物を建て、自身が経営する会社の事務所に使用していた。Aは、会社の経営規模を拡大させるべくB銀行から融資を受けることとし、2019年3月、Bとの間で、甲土地および乙建物につき、根抵当権を設定し、根抵当権者をBとする共同根抵当契約を締結した。ところが、乙建物は、2020年4月にこの地を襲った大地震によって倒壊、滅失した。Aは、これを機に別の場所に移して会社の新社屋を建てることにして、甲土地上には、2021年1月、比較的小さな丙建物を建築し、これをCに賃貸した。 ところが、ほどなくAの会社の経営は危機的状況に陥り、Aは弁済期日にBに対して債務を弁済することができなくなった。そこでBは、甲土地につき、上記根抵当権に基づいて裁判所に不動産競売を申し立て、裁判所は2021年12月に不動産競売開始決定をした(なお、BのAに対する被担保債権額は1億4000万円であった)。2022年4月、Yは、甲土地につき売却許可決定を受けて、代金9800万円を納付し、甲土地の所有権者となった。そこでYは、甲土地の所有権に基づく返還請求として、Aに対して丙建物収去・甲土地明渡請求を、Cに対して丙建物退去・甲土地明渡請求をした。 Yの訴えは認められるか。 ●関連問題● Y所有の甲土地とYの子Aが所有する丙地上の乙建物とに、Bの1番共同根抵当権(α)が設定された。翌年、Aが死亡し、乙建物をYが相続したが、その後に甲土地にCの2番抵当権(β)が設定された。次の各場合において、Xは、Yに対して乙建物の収去および甲土地の明渡しを請求することができるか。 (1) 上記のような状況のまま、Cがβ抵当権を実行し、Xが甲土地を買い受けた場合 (2) α抵当権の設定契約が解除され、抹消登記がなされた後に、Cがβ抵当権を実行し、Xが甲土地を買い受けた場合 ●参考文献● 伊藤進・金法1267号(1990)6頁 松本恒雄・百選Ⅰ 184頁
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法定地上権②
Aは、自己所有の甲土地上に5階建ての乙建物を建て、自身が経営する会社の事務所に使用していた。Aは、会社の経営規模を拡大させるべくB銀行から融資を受けることとし、2019年3月、Bとの間で、甲土地および乙建物につき、根抵当権を設定し、根抵当権者をBとする共同根抵当契約を締結した。ところが、乙建物は、2020年4月にこの地を襲った大地震によって倒壊、滅失した。Aは、これを機に別の場所に移して会社の新社屋を建てることにして、甲土地上には、2021年1月、比較的小さな丙建物を建築し、これをCに賃貸した。 ところが、ほどなくAの会社の経営は危機的状況に陥り、Aは弁済期日にBに対して債務を弁済することができなくなった。そこでBは、甲土地につき、上記根抵当権に基づいて裁判所に不動産競売を申し立て、裁判所は2021年12月に不動産競売開始決定をした(なお、BのAに対する被担保債権額は1億4000万円であった)。2022年4月、Yは、甲土地につき売却許可決定を受けて、代金9800万円を納付し、甲土地の所有権者となった。そこでYは、甲土地の所有権に基づく返還請求として、Aに対して丙建物収去・甲土地明渡請求を、Cに対して丙建物退去・甲土地明渡請求をした。 Yの訴えは認められるか。 ●解説● 1. 土地のみに抵当権が設定された場合 法定地上権の成立要件の1つに「抵当権設定時に建物が存在していること」がある(388条)。これに関しては、抵当権設定時に存在していた建物が滅失し、更地にされて丙建物が再築された場合は、法定地上権は成立しない。 通説・判例は、この場合、旧建物を基準とした内容の法定地上権の成立を認める。抵当権者としては、抵当権設定を受けたとき、法定地上権の成立を予定していたはずであるから、法定地上権を成立させても抵当権者が不当に害されることはならない、というのが理由である(大判昭和10・8・10民集14巻1549頁)。つまり、この場合に土地に設定された抵当権が担保価値として把握していたのは、底地価格(土地の価格から法定地上権価格を除いた部分)のみということになる。 2. 土地と建物の双方に根抵当権が設定された場合 では、本問のように、土地とその上の建物の双方に共同抵当権が設定され、その後に建物が再築された場合はどうか。①に掲げた判例からすれば、この場合も旧建物を基準とした法定地上権の成立が認められそうである。すなわち、建物に対する抵当権は建物と土地利用権の価格を、土地に対する抵当権は底地価格をそれぞれ把握していたと考えれば、建物滅失後に抵当権者が把握しているのは土地抵当権の対価である底地部分だけと解される(個別価値考慮説)。 しかし、参考判例①は、土地と建物に共同抵当が設定されていた場合には、再築建物のための法定地上権は成立しないとした。すなわち、土地の共同抵当の設定を受けた者は、土地および建物双方の担保価値を把握する。 3. 全体価額考慮説の背景とその範囲 問題は、この判決の射程をどのように考えるかである。全体価額考慮説が構想され、また最高裁がそれを採用した背景には、抵当権の実行に際する問題があった。たとえば、土地の抵当権者が乙建物に1番抵当権を、建物所有者が、新建物に丙建物を設定する1番抵当権として、旧建物を担保に取り増したにもかかわらず、新建物には別の債権者のための1番抵当権を設定するようなケースが多発した。さらに重要なのは、抵当実行が間近に迫ったときに、建物の取り壊しを嫌う第三者が、その後、簡易な建物を建て、法定地上権が成立する旨主張したのである。 4. 全体価額考慮説の共同担保への適用の可能性 参考判例①が、個別価値考慮説への言及を避け、法定地上権の成立を否定したうえで、このように述べように、再建・改築資金の融資に当たり、金融機関が予定していた抵当権の設定を受けず、再築後の建物への抵当権設定を受けた場合に、全体価額考慮説に即したうえで、法定地上権の成立を否定したことをどう理解しようか。 5. 「新建物」の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が再建について土地の抵当権の設定を受けた場合 参考判例①は、「新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が再建について土地の抵当権の設定を受けたときは、新建物のための法定地上権が成立すると認めるのを相当とするほか、所有権以外の第三者が建てた建物に1土地抵当権者が明示の共同担保の設定を受けた場合はどうなるのか等、さまざまな場面を想定しつつ、さらに検討を進めてもらいたい(この点に関連して、参考判例②参照)。 ●関連問題● (1) 本問において、Aが2021年6月に丙建物をBのために1番抵当権を設定しており、また、同年8月5日法定納期到来する国税6000万円を滞納していたとする。そして、甲から丁不動産が競売され、Yがこれを買い受け、1億2000万円が配当されることになった場合に、Bと国Gは、これらそれぞれに配当を受けられるか(なお、1億2000万円のうち土地部分は1億円、建物部分は2000万円であり、法定地上権が成立した場合の法定地上権の価額は土地の価額の6割であるとする)。 (2) 2019年6月、Aは、自己所有の甲土地上に乙建物を建築し、ここに丙建物を建築することとし、そのため建築費をXから融資してもらうことになった。その際、Aは、Xのために甲土地に抵当権を設定し、ほぼ完成後に丙建物にも抵当権を設定する旨のDとの間で約束した。同年10月、丙建物は完成し、Xは、Aからの丙建物の抵当権設定の要請に応じないばかりか、丙建物を建築した建築業者Yに対する工事代金の支払もしないままであった。Yは、Aの工事代金未払を理由に丙建物の引渡しを拒み、占有を続けている。2021年3月、Xは、抵当権に基づく甲土地の競売を申し立て、同年11月15日、Aは、丙建物の所有権をBに売却し、そこで、Xは、丙建物を占有するYに対して、丙建物の収去と甲土地の明渡しを求めて訴訟を提起した。Yの請求は認められるか。 ●参考文献● 小林明ほか・金法1493号(1997)24頁 佐久間毅・法教239号(2000)24頁 道垣内弘人・百選Ⅰ 186頁 高須順一・法教418号(2015)69頁
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ISBNコード: 978-4-7857-2991-2
抵当権と利用権の関係
Aは、自身の所有する共同住宅(以下、これを「本件建物」という)を賃貸していた。2024年10月7日、Aは、B銀行から融資を受けるに際し、その担保として本件建物にBのための抵当権を設定し、同日、その旨の登記を了した。 2029年頃からAのBへの返済が滞りがちになり、2030年11月からはほぼ返済がなされなくなった。そのためBは、2031年3月15日、本件建物について抵当権の実行による担保不動産競売を申し立てた。同月29日に、担保不動産競売開始決定がされ、同月31日に差押登記がされた。同年12月3日、Xを買受人とする本件建物の売却許可決定が確定し、翌2032年1月13日にXからの代金納付がされたことにより、Xが本件建物の所有権を取得した。 Xは、本件建物に居住する者たちに対して、ただちに明渡しを求めたい。2032年1月14日現在、本件建物の居住者Y₁〜Y₄が次の(1)〜(4)の状況にあるとすると、Xの請求は認められるか。 (1) Y₁は、2024年9月1日、本件建物の1号室を賃借している。 (2) Y₂は、2026年4月1日から本件建物の2号室を賃借している。 (3) Y₃は、2031年4月1日、本件建物の3号室を賃借している。 (4) Y₄は、2026年9月1日から本件建物の居住者Y₂から、本件建物の4号室を転借し、2027年4月1日以降Aに無断で、この部屋を転借し、1人で使用している。 なお、民事執行法83条の引渡命令にはふれないでよい。 ●参考判例● 東京高決平成20・4・25判時2032号50頁 ●解説● 1. 前提:抵当不動産の使用 抵当権は非占有担保である。抵当不動産の使用は、抵当権が設定された後も、抵当権者に占有が移転することなく(369条1項参照)、このように設定者が抵当不動産を利用できることから、設定者にとっても利益である。 なぜなら、抵当権者は、抵当不動産に対する担保価値を把握するにとどまり、抵当権が実行されるまでは抵当不動産を自由に使用収益できるほか、賃貸するなどの活動を継続できることで債務の弁済原資も高まるからである。 他方で、抵当不動産の使用収益においていくつかの調整を必要とする。たとえば、抵当不動産の使用収益が第三者である場合には、その妨害を排除する手段を与えられる(このような側面については→本章VⅢ参照)。したがって、抵当不動産が設定された不動産を使用するとしても、設定者による使用収益が一定の制約を受けることがある。 逆に、抵当権の設定が抵当不動産を使用収益する第三者との関係で、抵当権の設定が抵当不動産を使用収益する第三者との関係で、抵当権の設定登記後に賃貸借契約を締結する第三者との関係では、結論、抵当権設定登記後に賃借権が設定された不動産自体への帰属となる。 2. 抵当権と利用権の関係の調整 (1) 2003年改正前 利用権保護の方法については制度の変遷がある。2003年に担保執行法の改正がされるまでは、契約期間が比較的短期でかつ対抗要件を備えた賃貸借(短期賃貸借)を保護する制度が採用されていた。短期賃貸借と呼ばれる賃貸借の対抗力は、建物の賃貸の場合の期間は3年以下)。 (2) 2003年改正後 執行妨害を助長するため、短期賃借権を保護する制度は廃止された。抵当権設定登記後の賃貸借は、原則どおり抵当権者に対抗できないことになった。しかし、突如として買受人から退去を命じられる賃借人の不利益は大きい。そこで現在では、賃借人が建物の明渡の場合に限り、所定の要件を満たした者には、競売による買受時から6か月間、賃借物の明渡しを猶予することとし(395条1項)、建物賃借人の利益を最小限にとどめようとしている。その要件は以下のとおりである。 占有者に明渡猶予が認められるには、①抵当権設定登記後に建物を賃貸借し、②現に使用収益している占有者であること、③現に使用収益している占有者であること、④買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは建物を買受人に引き渡す必要はないからである。 (3) 本問への当てはめ 以上の前提を前提に本問のY₁〜Y₄に対するXの明渡請求の可否を確認すると、次のとおりとなろう。 Y₁は、Bの抵当権設定登記がされた2024年10月7日以前の同年9月1日から、本件建物を賃借している。抵当権設定登記後に賃貸借契約が締結されている場合は、そもそも明渡猶予の対象にならないことから、Y₁の占有権原として基づく賃貸借契約は、Y₁の占有として考えられるのは、占有権原としての賃貸借契約の存在である。すなわち、Y₁の賃貸借が対抗力を有していれば、それを買受人にしても対抗することができる。 Y₂は、2026年4月1日から建物を賃借しているが、これはBの抵当権設定登記後にされるため、短期賃貸借の保護を排した法改正では対抗力を得ることはできない。したがって、買受人の明渡請求に6か月は対抗することができない。 3. 転借人の扱い 以上みたY₂およびY₃に対する明渡猶予の可否は、民法395条1項の文言どおりである。転借人であるY₄について明渡猶予が認められるかは、条文の文言からはただちには明らかとならない。現在のところ、この点について最高裁判例はなく、また民法教科書で一般的に取り上げられる問題ではないが、明渡猶予制度の趣旨を考えるうえで1つの素材にはなるだろう。 4. 抵当権設定後の賃貸借の対抗力 以上述べたように、明渡猶予制度は抵当権設定後の賃貸借に対抗力を与えるものではなく、猶予期間経過後は、賃貸人は退去を拒むことができない。しかし、抵当権者の利益の観点からみると、賃借人は退去を拒むことができない。このように、賃貸借に対抗力を付与して、その存続を保障する制度と、2003年の改正では、抵当権設定登記後の賃貸借への対抗力の付与が認められている(387条)。 ●関連問題● 本問において、B銀行以外にAも本件建物上に抵当権を有しているとする。また、Bは、Bの抵当権上に抵当権(転抵当)を有している。Bが本件建物の所有権をAに代物弁済として、Aの抵当権を付与したとしているとき、法律上Bがとるべき手順を答えなさい。 ●参考文献● 片山直也・金法1876号(2009)29頁 三上威彦・民事執行管理(第2版)(2012)82頁
民法1
ISBNコード: 978-4-7857-2991-2
